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Preferred Networks、深層学習の研究開発基盤をPyTorchに移行

PyTorch開発チームおよびオープンソースコミュニティと連携し、フレームワーク開発、MN-CoreプロセッサのPyTorchサポートなどを推進

2019.12.05

株式会社Preferred Networks(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:西川徹、プリファードネットワークス、以下、PFN)は、研究開発の基盤技術である深層学習フレームワークを、自社開発のChainer™から、PyTorchに順次移行します。同時に、PyTorchを開発する米FacebookおよびPyTorchの開発者コミュニティと連携し、PyTorchの開発に参加します。なお、Chainerは、本日公開されたメジャーバージョンアップとなる最新版v7をもってメンテナンスフェーズに移行します。Chainerユーザー向けには、PyTorchへの移行を支援するドキュメントおよびライブラリを提供します。

PFN 代表取締役社長 西川徹は、今回の経営判断について次のように述べています。

「Chainerは、深層学習フレームワーク黎明期にあってPFNの基盤技術としてトヨタやFANUCを始めとするパートナーとの研究開発を支え、また、NVIDIAやMicrosoftなどの世界的企業とPFNの協業のきっかけにもなりました。これまでパートナー、コミュニティ、ユーザーにご支援をいただきながら開発を進めてきたChainerからPyTorchへ移行することは、PFNにとって非常に大きな決断です。しかし、現在最も活発に開発が進むフレームワークのひとつであるPyTorchの開発に、PFN自ら参加することで、Chainerを通じて蓄積した技術を活かすとともに、より競争力の源泉となる分野に開発リソースを集中投下することで、深層学習技術の社会実装をさらに加速できると確信しています。」

● 背景

PFNが開発・提供するChainerは、2015年6月にオープンソース化されて以来、PFNの研究開発を支える基盤技術として事業の成長に大きく貢献してきました。また、独自に考案したDefine-by-Run方式は、複雑なニューラルネットワークを直感的かつ柔軟に構築できることから、研究者・開発者コミュニティの支持を集め、現在主流の深層学習フレームワークのスタンダードな方式として広く採用され、深層学習技術の発展を加速させる一翼を担いました。

しかし近年、深層学習フレームワークが成熟したことで、深層学習フレームワークそのものが開発の競争力となっていた時代は終わりを迎えつつあります。細かい差異による差別化競争を継続するよりも、深層学習技術のさらなる進化に向け、ユーザーが選ぶ深層学習フレームワークにおいてコミュニティを継続的に発展させ、健全なエコシステムを築いていくことが重要です。

● PFNの深層学習の研究開発基盤をPyTorchに移行

こうした状況を受け、PFNは深層学習の研究開発基盤をChainerの開発思想に最も近いPyTorchに移行していきます。Facebookを含む熱心な開発者コミュニティを擁するPyTorchは、近年、深層学習の学術論文に最も頻繁に用いられているオープンソースの深層学習フレームワークのひとつです。PyTorchに移行することで、PFNは既存のChainer資産を活用しつつ、最新の研究成果を効率的に取りこむなどして、自らの研究開発を加速することが可能です。今後PFNは、FacebookのPyTorch開発チームやオープンソースコミュニティと密接に連携しながら、PyTorchの開発に貢献するとともに、自社で開発する深層学習プロセッサMN-CoreのPyTorchサポートなどを推進していきます。

各社より、以下のコメントをいただきました。

Facebook Vice President of AI Infrastructure, Bill Jia

「PyTorch開発をリードするコントリビュータとして、機械学習の先駆者であるPFNが、今後の開発にPyTorchを採用すると決めたことを大変うれしく思います。優れた分散学習機能と推論性能を備えたPyTorchは、PFNの最先端の研究を支援し、機械学習モデルの迅速なプロトタイプ化と顧客環境への実装を可能にします。同時に、機械学習ツールの深い専門知識を有するPFNが提供するコードは、PyTorchコミュニティ全体に大いに貢献してくれるでしょう。」

Gill Pratt, CEO, Toyota Research Institute (TRI)

「TRIとTRI-ADはPFNのPyTorchへの移行を歓迎いたします。PFNはChainerを生み出し継続的に開発してきたことにより、これまで我々との共同研究開発および自動運転技術の先行開発に大きく貢献してきました。TRIとTRI-ADはPyTorchも使用してきたため、PFNの今回のPyTorch採用により、PFNの持つ深層学習技術を我々が円滑かつ速やかに応用できるようになると信じています。」

 

● 深層学習フレームワークChainer™ v7および汎用配列計算ライブラリCuPy™ v7の主な新機能

Chainer v7では、C++製のChainerX との連携が大幅に強化されました。

  • 分散深層学習パッケージChainerMN を含め、Chainer の多くの機能がChainerXに対応
  • 複数カラムのデータセットを柔軟に処理できる TabularDataset クラスを追加
  • ONNX-Chainer の統合により、 ONNX を通じた推論エンジンなどとの連携が可能

Chainerの新機能、開発体制の変更、移行ドキュメントの詳細は、Chainer開発チームのブログをご覧ください。
https://chainer.org/announcement/2019/12/05/released-v7-ja.html

  • cuTENSORおよびCUBライブラリへの対応によりCuPyのNVIDIA GPUにおける性能が向上
  • CuPy において ROCm のサポートを実験的に追加、AMD GPU でも利用可能に

 

Chainer Release Note: https://github.com/chainer/chainer/releases/tag/v7.0.0

Chainer Documentation: https://docs.chainer.org/en/v7.0.0/

 

なお、PFNが開発提供するそのほかのオープンソースソフトウェア(CuPy、Optuna)については、今後も変わりなく積極的に開発を続けていく予定です。

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