国内初、AI技術による石油化学プラント自動運転に成功
熟練運転員の操作を自動化させるAIシステムを開発
2021.12.02
ENEOS株式会社(社長:大田 勝幸、以下「ENEOS」)と株式会社Preferred Networks(最高経営責任者:西川 徹、以下「PFN」)は、大規模かつ複雑であり、長年の経験に基づいた運転ノウハウが求められる石油精製・石油化学プラント(以下「プラント」)を自動運転するAIシステムを共同で開発し、このたび、ENEOS川崎製油所石油化学プラント内のブタジエン抽出装置にて2日間にわたる自動運転に成功しましたので、お知らせします。
本開発は人の技量に左右されないプラント安定運転の確立による保安力の向上に貢献するものであり、AI技術を用いた実際のプラントでの自動運転は国内初※1の取り組みです。
従来のプラント運転においては、運転員が24時間体制で運転監視および操作判断を行っていますが、昨今、運転ノウハウを有する熟練運転員の高齢化に伴い、今後人材不足が懸念されています。その対応策として、全国で製油所を運営するENEOSと先進的なAI技術を有するPFNは、2019年に戦略的協業体制を構築し※2、共同で高度なプラント運転を自動化するAIシステムの開発に取り組んできました。
プラント自動運転AIシステムは、過去の運転データやシミュレーターデータから複数のセンサー値とバルブ操作間の複雑な相関関係を学習することで、長年の経験に基づいた運転ノウハウであるセンサー値の予測とバルブ操作判断の自動化を可能にしました。今回のブタジエン抽出装置では、AIシステムによってプラント内の温度、圧力、流量および製品性状などの25個の運転重要因子の常時監視と12個のバルブ同時操作をおこない、原料処理量の変更などに伴う装置変動を安定化させ、2日間にわたる連続自動運転に成功しました。
なお、当該システムの開発においては、経済産業省が実施する令和2年度補正予算「産業保安高度化推進事業費補助金」などを活用しております。
本開発では、実運用に向けて今後ともブタジエン抽出装置での試験運転を重ね、人の技量に左右されないプラント安定運転を確立したうえで、常圧蒸留装置などの主要プラントおよび他製油所への展開を図ります。また、生産効率化・省エネ運転に貢献する新たなプラント自動運転AIモデルの導入も目指します。
両社は、本取り組みを通じて、持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)の目標9「産業と技術革新の基礎をつくろう」のゴールである「強靱なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図る」ことをはじめとした目標の達成に貢献してまいります。
※1 ENEOS調べ
※2 「株式会社Preferred Networksとの協業について」のプレスリリース(ENEOS)
<プラント自動運転AIシステムのイメージ>
<運転重要因子(例:製品性状のセンサー値)の経時変化のイメージ>
AIシステムはセンサー値の変動によるその上昇を予測しており、無操作では管理値上限を超過するため(緑線)、管理値上限以下に留める操作を自動的に実行する(ピンク線)。