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汎用原子レベルシミュレータMatlantis、PFNとENEOSの共同開発によるコア技術PFPの最新版v3を実装

地球上にある物質の99.99%以上にあたる72元素に対応

2022.09.16

株式会社Preferred Networks(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:西川徹、プリファードネットワークス、以下、PFN)とENEOS株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:齊藤猛、以下、ENEOS)は、共同開発した汎用原子レベルシミュレータMatlantis™ のコア技術であるPFP(Preferred Potential*1)の最新版となるv3の提供を開始しました。

v3は、対応元素が現行の55元素から72元素に拡大されるとともに、シミュレーション精度が向上したことにより、Matlantisを利用した材料開発のさらなる進展が期待できます。

広範囲な分野において特性が良好で競争力の高い新材料を開発するには、多様な元素に対応するのみならず、材料特性を左右する物質の原子構造、密度や結合状態といった性質をより正確に予測できることが鍵となります。

Matlantisのシミュレーション精度と汎用性をより高めるために、PFNは、PFPの学習に用いるデータの作り方に工夫を凝らし、深層学習モデルを発展させてきました。これまでにPFP開発に活用したPFNの計算資源はGPU*21台に換算すると1,144年分となり、データセットの総数はv1の開発時の2.2倍にあたる2,200万に達しました。それに加え、ENEOSの化学技術に関するドメイン知識を融合して精度の向上および用途の開発が行われました。

さらに、両社の合弁会社であり、Matlantisの販売を行う株式会社Preferred Computational Chemistry(以下、PFCC)を通じたMatlantisユーザーによるフィードバックも加わり、より多角的な開発と検証が行われています。

今回のバージョンアップによりMatlantisは、周期表の微量元素を除いた大部分をカバーする72元素に対応しました。これは、地球上に存在する物質の99.99%以上*3にあたります。

特に、排ガス浄化触媒や水素吸蔵合金などの用途で使用されるレアアース(プラセオジム、ネオジム、サマリウム)、次世代太陽電池での活用が期待されるハロゲン元素(臭素、ヨウ素)などに新規に対応したことで、今後、温室効果ガスの削減やクリーンエネルギーの開発にMatlantisが大きな役割を果たすものと期待しています。(持続可能な開発目標(SDGs)の目標7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」に貢献)

また、今までよりも高い精度で多様な化学反応や原子構造を再現できるようになったことから、実際に材料を作る前の段階で、材料の特性をより詳細に予測できるようになりました。具体例として、多くの計算のベースとなる有機分子の液体の密度について、多くの分子で実験によって得られた値を高い精度で再現していることを確認しています。

PFNとENEOSおよびPFCCは、今後もMatlantisとそのコア技術であるPFPの開発を進め、持続可能な世界を実現するための革新的な材料・素材の創出に貢献してまいります。

 

汎用原子レベルシミュレータMatlantisについて https://matlantis.com/ja/

Matlantisは、原子スケールで材料の挙動を再現して大規模な材料探索を行うことのできる汎用原子レベルシミュレータです。従来の物理シミュレータに深層学習モデルを組み込むことで、計算スピードを従来の数万倍に高速化するとともに、領域を限定しない様々な物質への適用を可能にしました。

両社の合弁会社であり、Matlantisの販売を行うPFCCが、2021年7月にクラウドサービスとして提供を開始してから、2022年9月1日時点で、41の企業・研究団体に導入され、触媒、電池材料、半導体、合金、潤滑油、セラミック材料、化学材料など、幅広い開発に用いられています。

マテリアルズ・インフォマティクスのコアツールとなるMatlantisは、様々な材料開発分野において革新的な素材の開発を加速させ、イノベーション創出・実現に貢献していきます。

 

*1:PFNとENEOSが共同開発した、材料探索のための汎用的な原子シミュレーションを実現する深層学習技術であるNeural Network Potential (NNP)の名前。NNPとは、ニューラルネットワークを用いて分子動力学ポテンシャルを表現するもの。S. Takamoto, et al. Nat Commun 13, 2991 (2022). doi: 10.1038/s41467-022-30687-9

*2:Graphics Processing Unit:画像処理に特化した演算装置で、高い並列演算性能を活かして深層学習やシミュレーションの高速な演算に利用されている。

*3:地球の地殻および海に含まれる元素の質量比で99.9969%以上。72元素に含まれない残りの元素の存在度を合計して計算。 CRC Handbook of Chemistry and Physics, 97th edition (2016–2017), ss. 14-17

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