最新気象レーダーMP-PAWRのデータ配信プラットフォーム 「きゅむろん」(ベータ版)を公開
2024.05.22
株式会社Preferred Networks(本社:東京都千代田区、代表取締役 最高経営責任者:西川徹、プリファードネットワークス、以下、PFN)と国立研究開発法人情報通信研究機構(本部:東京都小金井市、理事長:徳田英幸、以下、NICT)は、総務省が実施する情報通信技術(ICT)の重点研究開発プロジェクトの1つである「リモートセンシング 技術のユーザー最適型データ提供に関する要素技術の研究開発」(JPMI00316)に採択され、その実証実験の一環として、最新の気象レーダーであるMulti-Parameter Phased Array Weather Radar(マルチパラメータ・フェーズドアレイ気象レーダー、以下、MP-PAWR)が取得する四次元の観測データを圧縮・配信するプラットフォーム「きゅむろん」を試作しました。本日、首都圏の一定期間のアーカイブデータが閲覧できる機能をベータ版(https://cumulon.jp/)として研究者向けに公開しました。
気象レーダーMP-PAWRについて
NICTが中心となって開発したMP-PAWRは、水平・垂直偏波を同時に送受信できるマルチパラメータレーダーの特性と、ビームの電子的な制御によってアンテナの仰角を変えることなく高速に三次元観測を可能とするフェーズドアレイレーダーの特性をあわせもつ、最新の気象レーダーです。これにより、大気中の雨量を高速かつ高精度に三次元立体観測することが可能になりました。
局地的大雨(ゲリラ豪雨)やそれから引き起こされる内水氾濫の原因となる積乱雲は10分程度で急速に発達するため、従来のパラボラ型レーダーでその予兆を捉えるのは困難でした。最短30秒間隔で高精度に三次元立体観測ができるMP-PAWRを活用することで、その予兆を捉えることができると期待されています。
本プロジェクトの開発成果について
1.MP-PAWRの観測データ配信プラットフォーム「きゅむろん」
MP-PAWRで取得する観測データは、三次元空間中の各観測点で特徴量が得られる時系列データであり、その四次元的な特性を理解するには、異なるカメラ視点や透明度での動画表現が必要となります。今回「きゅむろん」に直感的なインターフェースを実装し、首都圏(埼玉大学に設置されたMP-PAWRを中心とする半径60㎞圏内)の一定期間のアーカイブデータの閲覧機能を公開しました。今後、夏を目途に首都圏データのダウンロード機能を追加するとともに、秋ごろには、昨年度から運用を開始した吹田MP‐PAWR、神戸MP‐PAWRのアーカイブデータの閲覧機能とダウンロード機能を公開する予定です。また、将来的には数分前の観測データが閲覧できるようになる計画です。
「きゅむろん」の利用には登録(https://cumulon.jp/)が必要です。
2.観測データの圧縮、伝送、復元技術
MP-PAWRは毎秒数百メガビットを超える膨大な観測データを生み出すため、本プロジェクトを通じてPFNがデータ圧縮、伝送、復元の技術を開発しています。これにより、災害時など通信帯域が限られるような場合でも迅速かつ安定的にMP-PAWRの観測データを通信できるようになります。
PFNとNICTは、MP-PAWRの観測データの試験的な利活用を促すことで、ゲリラ豪雨や竜巻などの大気状態の早期捕捉や発達メカニズムの解明、増大する自然災害の被害軽減への貢献を目指します。