PFNと計算科学振興財団、 AIプロセッサーMN-Core 2搭載システムの導入に合意
2024.09.10
株式会社Preferred Networks(東京都千代田区、代表取締役 最高経営責任者:西川徹、以下、PFN)と産業利用向けクラウドサービスを展開する公益財団法人計算科学振興財団(以下FOCUS*)は、PFNのAIプロセッサー「MN-Core™ 2」を8基搭載するサーバ「MN-Server 2」1台およびMN-Core 2を1基搭載する開発用ワークステーション「MN-Core 2 Devkit」 2台をFOCUSが導入することで合意しました。
近年、GPU(画像処理装置)をCPUアクセラレータとして数値演算に利用する汎用GPUの用途が拡大し、高性能計算(HPC)分野や深層学習、大規模言語モデル(LLM)での需要が非常に高まっています。また科学技術計算においては、非常に多数のプロセッサーを活用する高並列計算の利用ノウハウが必須となっています。
そこで、FOCUSは、同一の製造プロセスを採用する従来のアクセラレータよりも電力性能(消費電力あたりの演算性能)が優れているPFN製のMN-Core 2を、産業利用向けに全国で初めて導入します。また、アクセラレータ活用の並列プログラミング環境を直接体験可能なセミナー等を通して、利用拡大を推進する予定です。なお、今回FOCUSが導入するMN-Server 2およびMN-Core 2 Devkitは、利用者コミュニティによるPFNへのフィードバックの提供を前提としたCommunity Editionです。
FOCUSでは、かねてより市場ニーズに応じた多様なアーキテクチャの計算機システムを導入し、産業利用向けのクラウドサービスを提供してきました。今回導入するMN-Core 2を活用して、ものづくりを中心とした応用ソフトウェア開発・利用における利便性向上、ひいては産業向けHPC分野拡大への貢献を目指しています。
MN-Coreシリーズについて
MN-Coreシリーズは、深層学習の特徴である「行列演算」に最適化した専用プロセッサーで、PFNが神戸大学と共同開発しました。ハードウェアの演算器数を最大化するため、ネットワーク制御回路やキャッシュコントローラ、命令スケジューラなどの機能を内包せず、コンパイラにその機能を持たせて最小限の機能に特化することで、コストを抑えながら、深層学習における実効性能を高めています。MN-Coreを搭載して2020年に稼働したPFNのスーパーコンピュータMN-3は、2020年6月から2021年11月までに、スーパーコンピュータの省電力性能ランキングGreen500で3度世界1位を獲得しています。後継機のMN-Core 2は2023年に稼働を開始し、2024年中にクラウドなどを通じて外部提供を開始する予定です。
MN-Core2システムの概要は、別紙をご参照ください。
株式会社Preferred Networks コンピューターアーキテクチャー担当最高技術責任者 牧野淳一郎 のコメント
Preferred Networks では、主に深層学習をターゲットとしつつ、汎用HPCでも高い性能の実現を目標に、MN-Coreシリーズの開発を進めています。FOCUS ユーザへの計算資源のクラウドサービスの提供やセミナー開催をはじめとする利用促進は、幅広いユーザへのMN-Core提供の第一歩となるものです。また、これが日本の計算科学の新しい発展の始まりにもなると確信しています。
公益財団法人計算科学振興財団 専務理事 澤瀬修一のコメント
FOCUSでは、産業利用向けのFOCUSスパコンの提供や人材育成を通じた高性能計算の活用、さらにはスーパーコンピュータ「富岳」やHPCI(革新的ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラ)による産業競争力の向上に努めてきました。近年、シミュレーション、データサイエンスの進展、生成AIなどの技術革新などにより大規模計算需要が高まりつつある中、MN-Coreシリーズの継続性と省電力性能を評価し、利用者ニーズに適合するシステムとして、産業界に向けていち早く、本システムの導入を決定したものです。
*FOCUS:計算科学振興財団(兵庫県神戸市)の略称。2008年に設立(理事長:秋山 喜久、出捐:兵庫県、神戸市、神戸商工会議所)。2011年からスーパーコンピュータ(スパコン)利用企業層の拡大を目的に整備された産業利用向けのクラウドサービスを提供。これまで440を超える法人が利用。本年8月からはFOCUSスパコンを無償で利用できる「FOCUSスパコン試行利用制度」を設け、利用層の拡大のため活動中。
用語の説明
Flops(FLoating-point Operations Per Second):計算機の処理性能をあらわす単位のひとつ。GFlops、TFlops、PFlopsは、各々1秒間に10億回、1兆回、1,000兆回の浮動小数点演算を実行できる能力
GiB(ギビバイト):計算機の容量や記憶装置の大きさの単位。GiBは2の30乗バイト
FP64:倍精度浮動小数点数 FP32:単精度浮動小数点数
TF32/TF16:AIやHPCアプリケーションの中核処理で使用される行列演算を処理するためのGPUの新しい演算モード
HPCI(革新的ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラ):文部科学省が推進する国内の大学や研究機関の計算機システムやストレージを高速ネットワークで結んだ共用計算環境基盤
別紙: 導入するMN-Core2システムの概要
名称: MN-Core 2システム
台数:
MN-Core 2 搭載サーバ:MN-Server 2 V1 (Community Edition) 1台
MN-Core 2 搭載ワークステーション:MN-Core 2 Devkit V1 (Community Edition) 2台
MN-Core 2 搭載サーバ仕様
CPU: Intel® Xeon® Platinum 8480+(2.0GHz) プロセッサーx 2基, 合計112コア
倍精度理論演算性能: 8,960 GFlops
メモリ: 1,024GiB
ストレージ: システムSSD 960GB 作業用SSD 15.3TB SSD
ノード間ネットワーク: 100Gbps Ethernet x4
アクセラレータ: MN-Core 2 × 8基 (FP64 96TFlops, FP32 392TFlops, TF32 784TFlops, TF16 3.1PFlops)
MN-Core 2 搭載ワークステーション仕様
CPU: Intel® CoreTM i5 プロセッサー 14500 , 14コア(6性能優先コア2.6GHz+8効率優先コアE2.0GHz) ×1基
倍精度理論演算性能: 186 GFlops
メモリ: 64GiB RAM
ストレージ: 1TB HDD
ノード間ネットワーク: 10/100/1000/2500Mbps Ethernet x1
アクセラレータ: MN-Core 2 × 1基 (FP64 12TFlops, FP32 49TFlops, TF32 98TFlops, TF16 393TFlops)
MN-Server 2 (V1 / Community Edition)
MN-Core 2 Devkit (V1 / Community Edition)
* 画像は開発中のものです。納入システムとは外観等が異なります。